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■ エネルギーベースラインの推定


□ 実建物を用いたシミュレーションによる補正ベースライン推定法

 コミッショニングやESCO(Energy Service Company)の普及のためには, 省エネルギー量の客観的かつ合理的な評価方法が求められる.エネルギー消費量は気象条件や建物の運用条件によって変動するため, 省エネルギー量はこれら変動要因の影響を考慮して評価しなければならない. 省エネルギー量は,省エネルギー改修がないとした場合のエネルギー消費量を改修後に変化した変動要因で補正した消費量 (これを補正ベースラインと呼ぶ)と,実際の消費量との差として求められる.
 国際性能計測・検証議定書(IPMVP : International Performance Measurement and Verification Protocol)4)では, 補正ベースラインを求める方法として4つの選択肢(Option A, B, C, D)を挙げている. 現在,多くのESCO事業者は簡単な回帰式による方法(Option C)を用いており,シミュレーションによる方法(Option D)の適用事例は少ない. Option Dは,Option Cと比べて必要な情報と労力は増えるが,様々な気象条件や建物の運用条件の変化を考慮して補正ベースラインを求めることができ, より妥当な省エネルギー量の推定ができる.



図-1 補正ベースライン推定モデル



 本研究では,実建物のエネルギー消費量に関して綿密な計測を行い,その結果を用いてシミュレーションによる補正ベースラインの推定がどの程度正確に行えるかを分析・検証した. シミュレーションは空調機器の数理モデルと熱負荷計算モデルから成り,気象条件や建物の運用条件を入力することで,建物全体のエネルギー消費量を推定できる. 2005年7月~10月の3ヶ月間のデータを用いてシミュレーションの検証を行った結果,消費電力の推定値と実測値の差は約3.0%となり,精度よくエネルギー消費量を推定できることを確認した. また,シミュレーションに必要となるデータと推定精度の関係を整理した.



図-2 対象建物



図-3 熱源(左からミクロ,マクロ,表示画面)



図-4 計測風景(左から屋上温湿度,室内温湿度,外気取入口風速)



図-5 自動計測