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■ VAVシステムの不具合検知・診断


□ VAVシステムの不具合検知・診断手法に関する研究

 VAV (Variable Air Volume,可変風量式)空調システムの不具合検知・診断手法の提案を行い, 実建物に適用してその有効性を検証した.VAVシステムは省エネルギー性と快適性を両立する優れたシステムであり多くの建物に適用されているが, 風量を調整するVAVユニットに不具合が頻繁に生じることが報告されている.そのため,定期的な点検が必要であるが, 特に大規模建物ではユニットの設置台数が多く,メンテナンスを人海戦術で行うと多額の費用がかかるため問題となっている. VAVユニットの動作点検に要する労力や費用を削減するために,計測データを利用して不具合を自動的に検知・診断する手法が幾つか提案されているが2)3), これらはVAVユニットに風速センサが設置されていることを前提としている.風速センサのないVAVユニットも多くのビルで採用されており, このようなタイプのVAVユニットでは1台ずつ手作業により不具合を検知しているのが現状である.
 本研究では風速センサのないVAVユニットを対象に,データバスで容易に収集可能な室温センサ信号値と 開度要求信号値を用いて独自に定義した4つの判定変量を計算し,これらに異常値検出手法であるスミルノフ・グラブス検定を適用することで 不具合を検知・診断する手法を開発した.これを実際にVAVユニットの不具合が頻発している大規模建物に適用した結果, 全台数(1000台)の12%のユニットに不具合があると判定され,その中に実際に不具合があるユニット(6台)が全て含まれていた. 従って,この手法を用いて予め点検するユニットを絞れば,現在行っている全台数点検に比べて90%近く労力や費用を削減できる.



図-1 スミルノフ・グラブス検定


図-2 検定結果の例


□ VAVシステムの不具合によるエネルギー浪費量の把握,および浪費量の推定に
 関する研究

 VAVシステムの運転データを分析した結果,ユニットに不具合が生じても,他の正常ユニットがその働きを補完するため室内温熱環境には大きな影響が現れない不具合が存在することが明らかになった.コミッショニングの重要性を説くためには,不具合がシステムに与える影響を明らかにして費用対効果を明確にすることも重要である.そこで,実験室実験によりVAVシステムの不具合がシステム全体のエネルギー消費量に与える影響を調べ,次にシミュレーションを利用して不具合によるエネルギー浪費量を推定する手法の開発を行った.
 まず,室内外温熱環境を自由に設定できる実験室にあるVAVシステムにて,正常時と意図的に不具合を与えた時の運転データをそれぞれ計測してエネルギー消費量の比較を行った.運転データを分析した結果,例え不具合が室内温熱環境に悪影響を与えなくてもシステムの制御系に悪影響を与え,約20~50%のエネルギー浪費を引き起こすことを明らかにした.
 次に,空調機器の数理モデルと制御ロジックのモデル,建物の熱負荷計算モデルを繋ぎ合わせてシステム全体のエネルギー消費量を推定するシステムシミュレーションを開発した.前述の実験室の空調システムをシミュレーション上で構築し,シミュレーション上で正常時と不具合時のエネルギー消費量を推定した結果,実験で確認されたエネルギー浪費量とシミュレーションで推定された浪費量の差は約3.9%となり,シミュレーションを用いて不具合がシステム全体に与える影響を再現できることを確かめた.



図-3 実験室の様子


図-4 MATLAB/Simulinkより作成したシミュレーションモデル